私は赤ちゃんの産声にエネルギーを感じて助産師になりました。
総合周産期母子保健センターで助産師経験を積む中、無事に出産し退院する親子を見送っては、その先の幸せを願いました。同時に「この先大丈夫かな…」という心配を抱いていました。
産後の女性から「退院すると野に放たれたよう…」という言葉をよく耳にします。出産後の身体の回復が儘ならない中で、育児生活が目まぐるしく始まります。頼り先のない不安や社会からの孤立、思い通りにいかないことへの自責から、これまでに経験のない極度のストレスを感じやすいです。
私は自死された母子との出会いを経験しました。その経験から、大丈夫と言っても本当の心根にある悩みは、本人にしかわからないのだと感じました。医療者として救えなかった事実に、どうしたら未来があったのかと考える日々でした。
子育てを迎える家庭への関心が募り、2019年助産院(訪問専門)を開業しました。そこで目にした実態は、助産師として想像していた喜びに溢れる子育て環境とはかけ離れた現状でした。
訪問ケアへ訪れると、ご家族はおらず母子のみで過ごしているご家庭がほとんどです。日々の子どもの変化に喜びを感じながらも、頼る人がおらず、疲労や睡眠不足、不安の蓄積で鬱々と子育てをされている状況でした。
わたしはその現状に大きなショックを受けました。同時に一個人の助産ケアでは、安心した子育て社会を築くのに何年あっても足りないと思いました。
「助産師として思いがあっても、困っている親子へ手を差し伸べきれない社会を変えたい」そう決心しました。そこで私は「妊娠・出産・子育てに本質的な安心を生み出すこと」をミッションに掲げ、2020年7月7日「株式会社 nicomama 」を設立しました。
“ 産前からかかりつけ助産師が伴走する子育て社会の定着 ”を目指し、事業展開しています。